歌詞 / Lyrics
溢[あふ]れ返[かえ]るバラツク聚落[しゅうらく]を朽[く]ちた雪洞[ぼんぼり]が鈍[にぶ]く照[て]らす
簇離的棚屋聚落 以紙罩殘燭昏照
唸[うな]る蒸氣[じょうき]、喧[かまびす]しく響[ひび]き、最中[もなか]に廓[くるわ]聳[そび]へる
蒸氣嘶鳴、喧囂盈耳,其中聳立遊廓
紛[まが]ひ物[もの]の愛[あい]を身錢[みぜに]で乞[こ]ふ 今宵[こよい]も軋[きし]めくは坐敷[ざしき]の間[ま]
以私資乞求贋愛 今宵復聞座敷間吱嘎作響
光輝[こうき]燦然[さんぜん]と咲[さ]く卑[いや]し處[ところ] 鳴[な]り止[や]まむ新内流[しんないなが]しの音[ね]
卑賤之地燦然光輝 新內節之曲竟宵不絕
縁側[えんがわ]に腰掛[こしか]けて差[さ]し仰[あお]ぐ
座於迴廊仰睇
摩天[まてん]の樓閣[ろうかく]よ、御前[おまえ]さんは何[なに]思[おも]ふ
摩天之閣啊,爾何所思?
無間[むげん]地獄[じごく]の駕籠[かご]の中[なか]を
身墮無間地獄駕籠中
羽根[はね]捥[も]がれ、其處[そこ]に墮[お]つ、忌[い]みじく映[かは]ゆし私[わっち]を
如羽被剜斷,就此墮落,這般悽慘的我
揶揄[からか]ひ、嘲笑[あざわら]ひむすか
予我揶揄和嘲笑否?
身[み]を許[ゆる]せど、委[ゆだ]ねど、常[とこ]しへに
縱許身、委予、終永常無盡
此[こ]の心[こころ]は誰[だれ]にも靡[なび]かなひ
本心亦不屈於他人
何時[いつ]か、何時[いつ]か此[こ]の鳥籠[とりかご]から
有朝一日、有朝一日必會破此樊籠
飛[と]び立[た]つてみせむす
振翅高飛以示汝等
かごめかごめ、と口[くち]遊[ずさ]ぶ 不知夜[いざよい]月[つき]には雲[くも]懸[か]かる
籠中鳥啊籠中鳥,口中這般哼鳴著 十六夜月高懸雲端
びら簪[かんざし]が搖[ゆ]れ、いと靜[しず]かに囁[ささめ]く 其[そ]れを標[しるし]とし思[おも]ひ立[た]つ
簪花搖晃,於寂靜中呫囁 遂定計而脫逃此處
張[は]り巡[めぐ]る監視[かんし]暗箱[かめら]を欺[あざむ]ひて
瞞過四處佈滿的監視暗箱
摩天[まてん]の樓閣[ろうかく]におさらばえ、と言渡[ことわた]し
對摩天高閣訣別,如此渡言
常闇[とこやみ]の中[なか]へ溶[と]けてゆく
沒入常闇之中
存[ぞん]の外[ほか]、たは易[やす]く鳥籠[とりかご]を拔[ぬ]け出[だ]せむした
不意 鳥籠逃脫之易
此[こ]れが自由[じゆう]でありむすか
此即自由乎?
長道[ながみち]拔[ぬ]け、里[さと]越[こ]え、直[ひた]走[はし]る
疾走長衢,越野踰里,向前直奔
柳髮[やなぎかみ]に夜露[よつゆ]が零[こぼ]れ落[お]つ
柳絲垂髮夜露零落
今[いま]か今[いま]かとあらぬ世[よ]を待[ま]つ
此刻 即此刻 欲候新世
眼間[まなかひ]に見[み]ゆ夜汽車[よぎしゃ]
唯見夜間火車馳騁
錆[さ]びた鐵[てつ]の梯子[はしご]を脇目[わきめ]も振[ふ]らず昇[のぼ]つて行[い]く
心無旁騖 登鏽鐵之梯
裸足[はだし]の裏[うら]は血[ち]が滲[にじ]んで、掌[てのひら]の豆[まめ]は潰[つぶ]れて
赤足滲血、掌中水泡俱裂
然[そう]して辿[たど]り着[つ]きしは歩廊[ほろう] 貨物[かもつ]列車[れっしゃ]に驅[か]け込[こ]む
然抵月台步廊 混入貨物列車中
車内[しゃない]には影[かげ] 金[きん]の髮[かみ]をかき上[あ]げてゐた
車內見影 斂金髮而後束
明[あ]け透[す]け無[な]く女[おんな]は舌[した]囘[まわ]す
婦人啟齒,言辭露骨
「束[つか]の間[ま]の夢路[ゆめじ]は如何[いかが]でした?」
「方才黃粱一夢如何?」
何[なに]も、何[なに]も彼[か]も零[こぼ]れ堕[お]ちる
所有、所願盡碎
駕籠[かご]の外[そと]は囹圄[れいぎょ]でありむした
方知囚籠之外亦為囹圄
引[ひ]き摺[ず]られて沈[しず]むは底[そこ]の檻[おり]
被曳入深牢之底
賤[あや]しげなる手枷[てかせ]に繋[つな]がれて
為恥賤的手鐐禁錮
何時[いつ]か、何時[いつ]かと譫言[うわごと]を撒[ま]く
有朝一日,有朝一日的吐著囈語
此処[ここ]は夢[ゆめ]の塵塚[ちりづか]、籠女[かごめ]の夢[ゆめ]の跡[あと]
此地即夢之塵塚,籠女之故跡也